デヴィッド・ボウイ(David Bowie)が亡くなった。
享年69。
伝説のロックアーティストとしては、出来すぎた数字。
世界中で大きなニュースとなっているが、個人的にも一番好きなアーティストだったので、その喪失感は言葉では言い表せない。
最新作「★ ( Black Star ) 」発売の二日後の出来事。
最初、ニュースを見た時は何の冗談かと思ったが、色々なサイトを見るにつけ、事実なんだなとぼんやりと認識した。
思えば、彼自身も若い頃はとても長生きは出来ないだろうと思ってたようだが、ドラッグ漬け・不健康で無茶な生活を過ごしてきた若き日を考えると長生きだったのかも知れない。何よりもその信じられないクリエイティブなエネルギーと開拓精神からすると尚更そんな気もする。
最新作の「★」は、ボウイ自身が遺作となる事をよく分かった上で制作されている。そう考えるとこのアイコニックな★と言うのも実に意味深だ。(そして新曲の「Lazarus」のPVも。亡くなった今となってはちょっと引いてしまうくらいのリアリティ。)
私自身は、予約で購入し、発売日に入手したが、ボウイ逝去のニュースを受けて爆発的に売れてるらしい。全米チャート1位を取りそうな勢いで。
が、この遺作は「売れる」作りのアルバムでは無い。ポップさやキャッチーな受け入れやすさの要素は無い。
そう言う意味では、10年ぶりのカムバック作となった、前作「The Next Day」の方が遥かに受け入れやすい。
「ニューチャプター」と形容される現代ジャズの要素を取り入れたサウンド作りに挑戦しているが、どの曲も軽くない。ヘヴィーだ。
どこかのレビューで、実質ベルリン三部作の続きと書いてあったが、そうかも知れない。
しかしながら、この遺作でのトンガリぶり・開拓精神は、最後まで実にボウイらしい。
彼は1983年に「レッツ・ダンス」で大成功を収め、一躍、世界の一大スターとなったが、その立場でうまく泳げなかった。
クリエイティブのモチベーションを失い、迷走した。
ボウイは、どんなに売れても、万人受けするポップスターにはなり切れない、カルトスターなのだと思う。
その特異性と独自性は一部の人達を大いに信望させるが、皆に受け入れられるようなスターにはなり切れないし、そうなってしまえばデヴィッド・ボウイで無くなるだろう。
デヴィッド・ボウイは、自身が演じた「地球に落ちてきた男 ( THE MAN WHO FELL TO EARTH ) 」なのだろう。
ボウイは、カメレオンのように自身のペルソナやファッション、スタイルを常に変革させてきた。
だが、私の中ではボウイの根幹のイメージは、「地球に落ちてきた男」のトーマス・ジェローム・ニュートン、あるいは、同時期に発表された「ステイション・トゥ・ステイション」で登場するシン・ホワイト・デュークのイメージだ。
その鋭いアーティスティックな感性と才能、麗しく美しいルックスと、完璧なまでのキャラクターでありながら、どこか病的でどこか欠如している特異性。
地球人になり切れなかった異星人のような。何かを求め続け常に変革し続けるカルト的なヒーロー。
そして最後までデヴィッド・ボウイはデヴィッド・ボウイだった。
地球に落ちてきた男は、地球人になり切れないまま、地球を去ってしまった。
久々のブログエントリだけど、思わず反応してしまった。
しかし、新作「★」のエンドを飾る、「I Can't Give Everything Away」は、泣けます。
R.I.P.
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