K1 WORLD GP 決勝戦。2006年の目玉は、個人的には、やはり「Mr.パーフェクト」アーネスト・ホーストの引退試合と言うとこだろう。
年齢41歳。プロスポーツ選手としてはかなりの高齢だ。テクニックは衰えなくても、スピード、キレは全盛期に比べれば、見るからに衰えてる感がここ数年はあった。
昨年一度引退の意向を表明したが、その後撤回し、今年最後のチャレンジでチャンピオンを目指して、引退すると宣言した。
4度のK1制覇、フォー・タイムズ・チャンピオン。偉大なる記録だ。ただここ最近は、怪我や持病のアトピー性皮膚炎等に悩まされ、GP自体にまともに参戦出来ない状況だった。
私自身は、元々はK1にはさほど興味はなかった。フグが亡くなった時も、周りで騒いでいたが、何の事を言ってるかよく分からなかった。
が、何かのきっかけで、ホーストの戦いを見て、虜になった。
私は、プロスポーツには、いかに「完璧」かを求める傾向がある。F1にしてもそうだ。その時代のよりパーフェクトなドライバーが好きになる。
ホーストの戦いを初めて見た時に、こんなに完璧で強いファイターがいるのかと感銘した記憶がある。
格闘家には、それぞれ個性がある。得意なスタイルがある。蹴り中心、パンチ中心・・・。自ずとどこか偏ったスタイルが出て来たりする。
が、ホーストの姿は、全てにおいてのバランスが絶妙で、攻守やコンビネーションの流れが素晴らしく美しく見えた。見てて本当に「うまい」と言うか「美しい」のだ。それゆえに名付けられたニックネームも「Mr.パーフェクト」。ほんとにパーフェクトなバランスを持った格闘家だったと思う。
昨日行われた決勝戦。初戦のハリッド“ディ・ファウスト”戦は、試合開始序盤は、ホーストもやはり41歳だなと正直思うような鈍さを感じてたが、その後、ホーストならではの「うまさ」テクニックが光り、スピードははるかにファウストの方があるのだが、巧みさで勝利した。ファウストも試合後、41歳とは思えないコンディション、強さだったとコメントしていた。
最後だと決めて調整しただけあって、昨日のホーストのコンディションはかなり好調に見えた。相変わらずの間合い、戦いの巧さも見えたし、ハイキックなんかも繰り出していた。
しかし、準決勝のシュルト線では、善戦するも判定負け。「Mr.パーフェクト」のK1人生はここで幕を閉じた。
決勝戦自体は、セーム・シュルトが相変わらずの尋常ではない強さを見せ、2年連覇を成し遂げた。バンナ、ホースト、アーツとK1の創世記からの巨人達を倒したシュルトの強さは、確かに新しい時代の幕明けを確実にするものではあるけど、ボディ的な完璧さはシュルトに感じても「巧さ、美しさ」は感じない。
「Mr.パーフェクト」を継承する次期ファイターは正直思いつかない。プロスポーツは見ててやはり美しさを感じるものだと思う。そう言う意味では、このホーストの引退は、やむ終えないものであっても、寂しく、感慨深い思いがする。
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