F1は早、残り1/3を迎えた。
第13戦、ベルギーGP。伝統あるクラシックサーキット、スパ・フランコルシャンが舞台。
F1でも最長の7kmを超えるコースで、名物コーナー、オー・ルージュを始め、山岳の大自然の地形をそのまま利用した高低差の激しい、非常にスペクタルな難関コース。
F1でも屈指の名コースで、ドライバーの技量がそのまま試されるドライバーズ・サーキットだ。
天候が不安定なのも、そうした難関コースの印象を強くしている。雨絡みのレースが多く、またその中でセナやシューマッハなど、過去の飛び抜けたドライバーが大いに素晴らしいパフォーマンスを見せて来たのも、このスパである。
さて、このサーキットが得意なのは、キミ・ライコネン。スパでは過去3連勝(2004、2005、2007、2006年は開催されず)している。特に2004年はシューマッハがあまりにも強い年だったが、その中で、終盤、SC絡みでトップに立ったライコネンが、必死に追いかけるシューマッハをしりぞけ(むしろ近寄せる事もなく)優勝を飾ったのは、今でも鮮烈に記憶に残っている。
このレースで、シューマッハも自分以上の速さをライコネンに見たのと同時に、自分の後継者は彼が適任と確信したと言われている。
そんなライコネンが大得意なスパ・フランコルシャンだが、ここ数戦は著しく不調なライコネンが果たして復調を見せるのだろうか。
予選で気を吐いたのは、ハミルトン。全般的にマクラーレンが好調で、PP獲得。
2番手は、絶好調のマッサがゲット。ライコネンは、4位グリッドに沈んだ。
決勝レースは、その前に降った雨で、セミウェットコンディション。だが、予報も雨はしばらく降らない見込みだったのもあり、各車ドライタイヤでスタート。
ここでライコネンが魅せる。
1周目のオー・ルージュを駆け上がった所で既にマッサの真後ろにつき、すぐに2番手に上がる。2周目に入った所で、まだ路面の濡れが激しかった1コーナーでトップのハミルトンがハーフスピンを喫し、ライコネンが瞬く間に迫った。そのままオー・ルージュを駆け上がり、ラ・ソースでハミルトンをパス。一気にライコネンがトップに立つ。こう言う不安定なコンディションだとより感覚の鋭いドライバーが飛び出る。まさにライコネンの面目躍如と言う感じだ。
レースはそのまま、ライコネン首位、ハミルトン2位の構図でレースは進む。ドラマはレースの本当に終盤にあった。最後のスティントを迎え、ライコネンもハミルトンもタイヤは「ハード」。ハードタイヤだと、タイヤの温まり易さからマクラーレンに分があると言われていたが、6秒あった差はあっという間につまり、2秒弱と言う所までハミルトンが追いつめる。
ここで魔のスパ・ウェザーが。雨が落ちて来た。
ただでさえ温まりにくいハードタイヤで、雨が急速にタイヤを冷やし、おまけにウェットだ。グリップはなくなり、路面は氷上状態。
この中でハミルトンが急速にライコネンに追いつく。そして残り3周の最終シケインで両者は並ぶがライコネンがインを明け渡さず、扉を閉じた。衝突を避けるため、ハミルトンはシケインをショートカット。ピットストレートに先にハミルトンが侵入したが、ショートカットした為、ライコネンを前に行かせる。が直後の1コーナーでハミルトンそのままスリップからインをつきライコネンをオーバーテイク。
その後、雨は更に激しくなり、またトップ争いも激しくなり、ハミルトンもライコネンも両者コースアウトを喫し、順位が二転三転したが、ハミルトンが再びトップを奪回したところで、ライコネンが痛恨のスピンアウト、そしてクラッシュ。
実に素晴らしいパフォーマンスを魅せたが、ここでゲームエンドとなってしまった。
レースはそのままハミルトンがラストラップを慎重に周回し、トップチェッカー。
2位は今回は全く見せ場のなかったマッサ。手堅く事を運んだおかげでチャンピオンシップのポイントダメージは最小限に食い止めた。
と言う事で、ハミルトン今季5勝目かと思いきや、レース終盤のハミルトンのシケインショートカット及びその後のライコネン、オーバーテイクに関して、審議対象となり、結局レースが終わった後に、25秒加算のペナルティがハミルトンに課せられた。
これでリザルトとしては、マッサが勝利、ハミルトンは3位に降格と言う結末に・・・。
正直、白けた。レース自体はとても面白かった。久々にライコネンらしさも見れたし、ハミルトンのパフォーマンスも素晴らしかった。しかし結末は何も見せ場のなかったマッサが優勝・・・。
確かに、ハミルトンの一連の動きは、微妙と言えば微妙。シケインショートカットした後の、ライコネンに前に行かせたのも、スピードはさほど緩めずにであまり「潔い」やり方ではなかったし、直後のオーバーテイクは更に印象を悪くしているのは事実。1コーナーでオーバーテイクしていなかったら、きっと審議にはならなかっただろうけど、何よりも、あれ程、エキサイティングなレースが終わった後に、ペナルティ適用で、しかもペナルティ内容が25秒加算の順位変動と言う結末が、何とも後味悪い。
要は本来はドライブスルー・ペナルティに該当する為、25秒加算と言うのが理由のようだけど。
元F1チャンピオンのニキ・ラウダは、F1史上最悪のペナルティ適用で、FIAの職員によってチャンピオンシップが操作されるのは容認出来る事ではないと酷評しているけど、確かに、タイミング的に政治的な操作がなされてると思われてもしょうがないような結末だ。
マクラーレン側は当然不服で、このペナルティに対して控訴するようだが。
確かに、今回の件でハミルトンは6ポイントを失った事になる訳で、最終的にハミルトンが6ポイント差以内でチャンピオンを失うような事になれば、後々までこのペナルティの話が議論になるだろうし、チャンピオンシップ自体、操作されたものだからって感じが残りそうだ。
これで、恩恵に預かったのはマッサ。ハミルトンとのポイント差は2ポイントまで詰まった。マッサはこれで今季5勝目。そのうち、フランスと今回のベルギーの2勝は、タナボタ。勿論レース残り僅かで優勝を逃したハンガリーはあるけれども、ツイていると言う印象は拭えない。
これでチャンピオンシップまで制覇したらいかがなものか・・・。速さは確かにあるし、最近のパフォーマンスも実に素晴らしい。特に調子が今ひとつなライコネンと比べると、尚更、対照的。でもマッサがF1最高のドライバーかと言うと、やっぱりそうは思えない。
この先、どう言うチャンピンシップ展開になるか分からないが、今回のレースのように白けた結末にだけはならないで欲しいと思ったりする。けどこれも水物だからなぁ。
でも一番かわいそうなのは、ライコネンだね。結局結末はどうあっても変わらないし。
F1第13戦、ベルギーGPの決勝結果は以下の通り。
1 F・マッサ フェラーリ 1:22:59.394
2 N・ハイドフェルド BMW + 9.383
3 L・ハミルトン マクラーレン + 10.539
4 F・アロンソ ルノー + 14.478
5 S・ヴェッテル トロロッソ + 14.576
6 R・クビサ BMW + 15.037
7 S・ボーデ トロロッソ + 16.735
8 M・ウェーバー レッドブル + 42.776
9 T・グロック トヨタ + 67.045
10 H・コヴァライネン マクラーレン + 1 laps
11 D・クルサード レッドブル + 1 laps
12 N・ロズベルグ ウィリアムズ + 1 laps
13 A・スーティル フォースインディア + 1 laps
14 中嶋 一貴 ウィリアムズ + 1 laps
15 J・バトン ホンダ + 1 laps
16 J・トゥルーリ トヨタ + 1 laps
17 G・フィジケラ フォースインディア + 1 laps
Did not finish
18 K・ライコネン フェラーリ + 3 laps
19 R・バリチェロ ホンダ + 24 laps
20 N・ピケ・ジュニア ルノー + 31 laps
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