事実は小説より奇なり?どんなフィクションでもあり得ないストーリー?
F1最終戦は、何とも形容出来ない、信じられない結末で幕を閉じた。
結果的には、ルイス・ハミルトンが、5位でフィニッシュをし、初のワールドチャンピオンを獲得したが、それはゴール前700mでの大逆転だった。
F1最終戦は、マッサの母国、ブラジル、サンパウロ。インテルラゴスサーキット
1990年から、開催されている、非常に息の長いコースだ。
最近のF1サーキットから見れば、かなりバンピーなコース。しかも左回りの特殊なパターン。
チャンピオンシップのポイント差は7ポイント。
ここで勝つしかないマッサが、初日から好パフォーマンスを見せ、予選も見事PP獲得。完璧な滑り出し。
例え、マッサが勝っても、5位以上であればチャンピオン獲得のハミルトンは、車のパフォーマンスは良さそうだったが、予選はさほど気合もなく、4番手。ガソリン搭載量もマッサに比べれば多そうだ。
そして、決勝レース。天候はこのウィークエンド、割と不安定だったが、正にフォーメーションラップが始まる直前に、物凄いスコールが降り出した。
これにより、決勝レースは、10分スタートディレイ。
雨はすぐに止んだが、路面はすっかりウェットに。
10分後フォーメーションラップが始まり、いよいよレーススタート。
スタートは各車無難に。マッサはトップをキープし、ハミルトンも4位キープ。
雨はすっかり止んでいるので、路面は急速に乾き、ヴェッテル、アロンソと言ったところが真っ先にドライに交換。その後各車がドライに交換したが、路面は予想以上に乾いてた模様で、先に交換した車がポジションをアップ。
マッサ、トップは変わらずだが、ヴェッテル、アロンソがその後に続く展開で、ハミルトンは6番手に落ちる。
その後、ヴェッテルのピットインなどで、ハミルトンは安全圏の4位に落ち着き、マッサがトップ快走の中、淡々と周回を重ねるが、最後にまた大きな展開が待っていた。
残り、6周くらいのところで、また雨が降ってきた。しかも激しい雨。各車ピットインしウェットタイヤに交換。しかし、トヨタの2台はギャンブルに出て、ドライのまま走行を続行。この結果、タイヤ交換後、ハミルトンは5位に落ちる。ヴェッテルが後ろにぴったりと張り付く。
そして、ラップ遅れのクピサがウェットでのバランスが良く、ヴェッテルを抜き、ハミルトンもオーバーテイク。リスクを嫌ったのか、ハミルトンはクピサに抜かれる際、ラインを外す。その隙に乗じてヴェッテルもハミルトンをパス。この瞬間、ハミルトンは6位に落ち、マッサトップの状況で、このままだとチャンピオンシップはマッサが逆転の構図。
この瞬間、ブラジルの観客全体がどよめいた。
残り2周での出来事だ。何と言う事だろう。8ヶ月に渡って繰り広げられたチャンピオンシップが、この土壇場で大逆転となるのか。ハミルトンは昨年に引き続き、またもや土壇場で敗れると言う苦渋をなめそうな情勢となった。
そして、ラストラップ。ハミルトンはセッティングが合ってないようで、かなり不安定なドライビング。コーナーの度に滑っている。必死にヴェッテルを抜こうと試みているが、極めて難しい感じだ。そして、最終コーナー手前、ヴェッテルを抜けないまま、ここまで来たが、ここでトヨタの1台がゆるゆると走行。
ドライのままのギャンブルに出たグロッグだった。4位を走っていたが、もはやドライで走れる路面状況ではなく、コース上にいるのが精一杯の状態。そこをヴェッテルと、ハミルトンが何なく交わし、ハミルトンが再び5位に浮上。正にゴール直前の再逆転劇だった。
この結果、辛くも1ポイント差でハミルトンが最年少チャンピオンを決めた。ブラジルの観衆は天国から一気に地獄に突き落とされた感じだろう。
このあまりにも良く出来た展開に対し、グロッグの陰謀説も流れたほどだが、これはあり得ないだろう。実際、同じドライでギャンブルに出た、トゥルーリも、最終ラップはグロッグとほぼ同じタイムで、ウェットタイヤの車より20秒遅かった。
しかし、マッサは実に素晴らしいレースをした。彼が出来うることは全て出し切ったと言う感じだ。プレッシャーと母国の観衆が寄せる期待の中、完璧なレース運びをした事は大きな意味があると思う。
表彰台でのマッサは、素晴らしいレースをした誇りと、わずかに運に見放された悲哀感に溢れてたが、その表情は実に風格があり、今までの彼とは明らかに異なるものだった。このレースでまた一段と成長を遂げた感がある。いい表情をしていた。
今シーズンの序盤は、ミスも多く、チャンピオンとして相応しくないドライビングも多かったが、後半は実に安定した速さとパフォーマンスを示した。同じドライバーとは思えない程だ。そして、最終戦ブラジルではそれが1つの完成形として、完璧なレースを見せた。彼は成長型のドライバーだ。昔のムラのあるドライビングのお陰で、未だ評価は低い傾向にあるが、今回の悔しさをバネに更なる飛躍を遂げて欲しい所だ。
ハミルトンも今シーズンは浮き沈みが激しく、素晴らしい時は実に素晴らしいのだが、その言動やドライビングマナーの悪さから、色々と批判をされてきた。
チャンピオンを獲った事で、様々な面でチャンピオンドライバーに相応しいドライバーへと成長して欲しいと思う。
そして、今シーズンは、総合力としては、やはりアロンソが最強だと改めて認識させられた気がする。競争力の劣るルノーで今期序盤は果たしてどうなる事やらと言った予想以上のパフォーマンスの悪さだったが、シンガポールでの勝利を期に一気にルノーは加速した。最後の4戦で見れば、アロンソは実に33ポイントを獲得しており、どのドライバーよりもポイントを獲っている。
やはり、彼の能力は侮れない。特にチーム自体を引っ張り成長させる力がある。来シーズンは、おそらくルノー残留だろうが、来シーズンどのような戦闘力を発揮してくるか楽しみなところだ。
で、あっけなくチャンピオンを奪われたライコネン。昨年は、シーズン中盤から自分のドライビングスタイルに合ったベースセッティングを見つける事が出来、それ以降パフォーマンスが改善され、逆転チャンピオンを掴んだが、今シーズンは最後まで、はまるセッティングを見つける事が出来なかったようだ。
今年のスペインで見せたように、ハマれば文句のつけようがない程、速いんだが・・・。チームに溶け込みマシンを自分好みに作り上げて行く能力に長けていない為、自分に合った車が出来なければ、来シーズンも苦労するだろう。
2009年はレギュレーションも大きく変わり、これまでの勢力図が一変する可能性がある。
特に、リソース規模が大きいとは言え、最終戦まで今季の開発に注力してきたフェラーリとマクラーレンがどこまで、2009シーズンの開発が出来ているのか、出来るのか気になる所だ。
しかし、2008のF1シーズンもこれで終わり。毎回思うけど、早い。
最終戦のTV視聴率は各国で過去最高レベルを記録した模様だが、日本は相変わらず低いんだろうね・・・。
今シーズンは、レベルの低いチャンピオンシップだと言う声もあったし、そう言う印象はあるが、こんなにスリリングな展開が多かったシーズンもあまりなかった気がする。最終戦然り、FIAの白けた介入はあったが、ベルギーGP然り。
最終戦、ブラジルGPの決勝結果は以下の通り
1 F・マッサ フェラーリ 1:34:11.435
2 F・アロンソ ルノー + 13.298
3 K・ライコネン フェラーリ + 16.235
4 S・ヴェッテル トロロッソ + 38.011
5 L・ハミルトン マクラーレン + 38.907
6 T・グロック トヨタ + 44.368
7 H・コヴァライネン マクラーレン + 55.074
8 J・トゥルーリ トヨタ + 1:08.463
9 M・ウェーバー レッドブル + 1:19.666
10 N・ハイドフェルド BMW + 1 laps
11 R・クビサ BMW + 1 laps
12 N・ロズベルグ ウィリアムズ + 1 laps
13 J・バトン ホンダ + 1 laps
14 S・ボーデ トロロッソ + 1 laps
15 R・バリチェロ ホンダ + 1 laps
16 A・スーティル フォースインディア + 2 laps
17 中嶋 一貴 ウィリアムズ + 2 laps
18 G・フィジケラ フォースインディア + 2 laps
Did not finish
19 N・ピケ・ジュニア ルノー + 71 laps
20 D・クルサード レッドブル + 71 laps
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