新しいF1シーズンが開幕した。2009年F1シーズン。今シーズンの開幕は昨年より3週間遅い。また年間レース数も昨年から1つ減り、17レースとなった。
今年の目玉はそれよりも、過去20年で最大規模と言われる、大幅なレギュレーション変更だ。
昨今の空力の進化に伴い、レース中のオーバーテイクは極めて困難となっていたが、今回のレギュレーション変更により、空力デバイスに制限を施し、空力ダウンフォースを削減し、オーバーテイクの機会を増やすと言うのが狙い。さらにオーバーテイクを促進させる要素として、フロントウィングのフラップの角度調節を可変としたのに加え、ブレーキング等で発生したエネルギーを蓄積し、瞬間的な加速装置として利用出来るKERSの導入が試みられた。
また、ダウンフォース削減の補填として、今まで不自然な溝付タイヤだったのが、往年のスリックタイヤが復活。車自体は、空力を制限する為に、フロントウィングが異様に大きく(横幅が長く)、リヤウィングが不自然に幅狭で、位置が高くなっている。まるでチリトリのような井手達だ。
そして新レギュレーションでの開幕。
オフシーズンのテストでも、見えていたが、昨年のドライバーズチャンピオンチームのマクラーレンが、絶不調。昨年、最終戦まで開発を続け、リソースを2009年の開発に回す余裕がなかったのかも知れないが、それにしてもここまで、空力をしくじるとは思ってもみなかった(当のチームもここまでスピードが足りないとは思ってなかったようだが)。開幕では持ち直すと言う見方もあったが、そんなに甘くはなく、やはりオフのテスト通りのパフォーマンスの悪さを示す事になった。マクラーレンは、予選Q1は何とか通過したものの、Q2落ち。昨年の栄光はどこへやら。
対照的に関係者を驚かせたのが、旧ホンダ体制の新生ブラウンGP。
ホンダがF1撤退を発表した後、様々なチーム買収話があったものの、去就は決まらず、ようやく3月の1週目になってから、ロス・ブラウンがマネージメント・バイアウトの形態でチームを買収する事が確定し、ブラウンGPとして存続する事が決まった。
それから、シェイクダウンを行い、オフテストに参加したが、そのテストで、トップタイムを連発。
周囲からは、スポンサー獲得の為に、わざと燃料を軽くし、車体も軽くしてるんじゃないかと言われるくらいの好パフォーマンスを見せた。
昨年、ホンダは大規模レギュレーション変更となる2009年の開発に専念し、2008年はほとんど捨てたシーズンだった。昨年の開発に要したコストは全チームの中でホンダがトップだった。
その事を考えても、今年のマシンに対する開発熟成はかなりのレベルに達しているようで、テストの時にその素性の良さがひしひしと出ていた。
そして、オーストラリアGP開幕。
ここでもブラウンGPの速さが際立った。
結局、予選は何とブラウンGPがフロントロー独占。
テストでの速さがブラフではない事を証明した。しかも今年からFIAが予選後の各車の重量データを公開する事になったが、そのデータでも決して軽くはなかった。そこそこ燃料が入っている状態での余裕の1-2.
さて、決勝レース。
例年、オーストラリアGPは荒れ模様になるが、今年もやはりそれなりに荒れたレースとなった。セーフティーカーは結局2回入った。
そんな中、スタートから手堅く首位を守り、後は楽にレースをコントロールした、ブラウンGPのバトンが自身2度目となる勝利を飾った。まさにイージーレース。そんな印象。
そして、2位には、スタートでこそ失敗し、後ろに下がったが、ちゃっかりとバリチェロが入り、何と、ブラウンGPが初戦で1-2フィニッシュを飾ると言う大快挙を達成した。
この好調ぶりを見て、今までホンダ買収の候補として話の挙がってたヴァージンレーベルがメインスポンサー契約を発表。
更に、スポンサーシップを強くする(チーム買収含め)可能性も濃厚な模様。まさに漁夫の利と言ったところか。
しかし、このとんでもない快挙に対し、ホンダ経営陣はどのような感情で受け止めてるんだろう。ロス・ブラウンは恐らくある程度の戦闘力を元々予想していたに違いないと思うが、このホンダの撤退〜ロス・ブラウン買収劇の流れで、ブラウンの策士的な動きもあったのかも知れない。
ちなみに、ブラウンGPを始め、トヨタ、ウィリアムズのディフューザー仕様について、レッドブル、フェラーリ、ルノー、BMWがレギュレーション違反として、FIAに抗議を提出したが、レーススチュワードの判定は、白。だが、それでは収まらず上訴となった為、別途審議会で判定が出る模様だ。マクラーレンもこの抗議チームに加わる準備がある模様。
しかしながら個人的には、レギュレーションの網に気付いた者勝ちで、そのチームは少なくとも3チームある訳だから、これが違法の判定となり、ペナルティやらが科せられるような事があると何ともつまらないって気がする。
この大幅なレギュレーション変更は、今までのチーム勢力図を一変する可能性があり、事実そうなりそうな訳だから、これこそF1のスペクタルだと思う。方法に気付かなかった方が負けなのでは。
つまらない裁定にならない事に期待したい。
そして、マクラーレンは、ハミルトンが混乱の中、非常にラッキーにも3位を獲得した。がこれは戦力から言ってもあくまでもまぐれでしかない。予想以上に状況は悪そうだ。今後の改善はかなりハードなものになるだろう。
そして、2台揃ってリタイアと、全く期待はずれに終わったフェラーリ。しかしフェラーリはここのところ、オーストラリアはダメだ。例年通りって感じだけど、何なのだろう。
ともあれ、ブラウンGPの鮮やかなデビューに感激した、開幕戦だった。
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