2010、F1シーズンの折り返し (1)

| コメント(0) | トラックバック(0)
このエントリーをはてなブックマークに追加
F1-2010-2.jpg

今シーズンのF1は、全19戦。
その内の折り返しとなる、第10戦、イギリスGPが先日行われた。

ここまでの戦績は、ハミルトン、バトン、ヴェッテル、ウェバーがそれぞれ2勝ずつ。アロンソが開幕の勝利で1勝のみ。
総合点では、ハミルトンがトップを走り、バトンがそれを追走する形。下馬評では、また、実力をみても、明らかにレッドブルがトップなのだが、結果としてはマクラーレンの両ドライバーが上位を占め、コンストラクターでもマクラーレンが首位を走る。
車のパフォーマンス、開発競争で先頭を行っているのは明らかにレッドブルだ。幸運の部分、最低限のダメージ・ロスのマネージメント。そう言った要素で、結果的にはマクラーレンがトップになっている。


技術開発の行方

昨シーズンのダブルディフューザーと同様に、今シーズンもマシン戦闘力のキーとなる技術トレンドがある。ダブルディフューザーについては、昨年、合法と判断された事で、どのチームも搭載しているが、今シーズンは、更なるアドバンデージを得ようと各チーム、アイデアを捻り出しているが、その中でも、まず大きな注目を集めたのが、マクラーレンが採用した「Fダクト」だ。

Fダクトは、リアウィングに対して、通常の気流よりも速い空気の流れを局所的にぶつけることにより、リアウィングを空力的にストール状態にし、空気抵抗を減らし、直線スピードを伸ばす狙いのもの。
この仕組の空気の入口をドライバーが膝により開閉コントロールをする事から、「フットダクト」=「Fダクト」と名付けられたようだ。(尤も、これはマクラーレンがそう呼んだ訳ではなく、勝手に名付けられた俗名だ。)
ウィングを意図的にコントロールする事から、レッドブルのクリスチャン・ホーナー始め、その合法性に疑問を呈していたが、FIAが正式に合法と判断した事から、一斉に各チームで、コピー開発が始められた。然しながら、この仕組みを完全に機能させる為には、シャシー構造自体をFダクト前提で設計をする必要があり、今の規約では、シャシー構造の設計変更は認められていない為、元々Fダクトを念頭に設計を行ったマクラーレンとは異なり、他チームは妥協を強いられることになる。それでも少しでもアドバンテージの差をなくす為に、フェラーリ、メルセデスやザウバーなどが投入。そして、レッドブルもヨーロッパGPで本番投入を行った。
メルセデスの場合は、エンジンカバーが、最近のトレンドであるシャークフィンではない為、また、Fダクトは、エンジンカバーを通じてリアウィングに空気が導かれる為、機能を有効に活かすことにかなり苦労しているようだ。
傍目には、後発のレッドブルが一番効果を発揮しているように見える。元々、レッドブルはトルコGPでFダクトを投入したが、効果に満足出来ず、更に開発を続け、バレンシアで満を持して実戦再投入した。結果、マクラーレンに有利と思われていたトラックで、ヴェッテルが、ポール・トゥ・ウィンを達成する。元々レッドブルが一番速い車だったが、より一層、スピードを増した感がある。

さて、そのレッドブルだが、イギリスGPの時点で10戦中、実に9戦でPP獲得。とにかく圧倒的に速い。特に予選でのパフォーマンスが圧巻であり、予選でのあまりの強さに、当初ライバル達は予選でパフォーマンスを発揮する為に、特別な(また違法な)サスペンションシステム、あるいは車高調整システムを持ってるのではないかと疑っていた。しかし、FIAによる徹底的な車検でも何ら違法なものは見つからず、結局分からずじまい。そのうち、レッドブルの他チームとの大きなアドバンテージとしてある部分が注目されるようになった。それがエキゾーストの位置。最近はかつてのフェラーリに端を発し、エキゾーストは、比較的上部に排気口を設けるのがトレンドだったが、レッドブルは、ディフューザーに近い位置、かなり下部の方にレイアウトしている。このレイアウトの理屈は、エキゾーストからの排気流をデフューザーに効果的に流すことにより、一層大きなダウンフォース獲得とダブルディフューザー効果を狙うもの。
レッドブルはシーズン開幕前のテスト時もこの巧みなエキゾーストレイアウトを隠すようにしてきた。

この通称「ブロウンディフューザー(吹き付けディフューザー)」は、こうしてライバルチームに注目されるようになり、一斉にコピー合戦が始まっている。フェラーリ、ウィリアムズ、ルノー、メルセデスは、ヨーロッパGPからブロウンディフューザーを投入してきた。これにより、特にウィリアムズは大幅にパフォーマンスがアップした感がある。しかし、このシステムが難しいのは、ひとつは、排気口から排出される空気は非常に高温である為、この高温の影響を排除する事だ。実際、ウィリアムズのN・ヒュルケンベルグはヨーロッパGPではこの熱の影響と思われるトラブルでリタイヤしている。

次に、排気ガスによる空気流入の為、通常では、スロットルの開閉状況により空気の流入量が異なる事になる。ブレーキング時やコーナリング時は空気量が変動しバランスが不安定になる事も考えられる。
マクラーレンは、イギリスGPでブロウンディフューザーを投入してきたが、ポテンシャルの高さは実感されたものの、バランスが非常に不安定で、ハミルトンはそれでもこのシステムの導入に意欲を示したものの、ハミルトンよりも不安定さを克服できないバトンや信頼性を懸念するウィトマーシュなどの意見により、結局レースへの投入は見合わされた。次戦のドイツGPに照準をあわせて、更に開発を進める。

なお、レッドブルは、この空気量のバランスについては、スロットルを開けていない状態でも排気ガスを排出するようなエンジンセッティングを、予選時に限り行っている模様で、この事が予選での圧倒的なパフォーマンスを裏付ける結果となってるようだ。


F1のおけるコスト削減が叫ばれているが、競争原理として、他チームのアドバンテージの仕掛けが分かれば、それに追いつこうと必死に開発を行う。コストも掛ける。F1の体質を考えれば、所詮はエコやコスト削減とは相反する。
しかも、昨年ブラウンGPをチャンピオンシップ制覇に導いた、ダブルディフューザーも、またマクラーレンが考え出した巧みな空力ソリューション、Fダクトも、2011年は禁止される。にも関わらず、F1で勝利をおさめる為には、ビジネスに勝つ為には、それが継続的な意味合いを持たないと分かっていても、コストを消費し開発を行わざるを得ない。この競争体質とコスト削減、矛盾する指向性をどこで折り合いつけるかは、どうバランス取るかなんだろうが、難しい問題ではある。



トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.bau-haus.com/cgi-bin/mt_4/mt-tb.cgi/401

コメントする

Adsense



ValueCommerce